妖刀 幾星霜 物語

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探偵の部屋をあとにし、ヘルは館の二階へ赴いた。 トントンと1つの部屋を叩くが、返事はなかった。 扉を開けても、やはり誰もいない。 「大抵はここにいるのに……」 そこはヘルの部屋だった。 ヘルの人格が表に出ている間、基本的にはそこに管理人が住んでいる。はずだった。 少し考えたあと、ヘルはいい女の部屋を訪ねた。 トントン「はあい」 部屋の先には、風呂に浸かる1人の女性がいた。 「あら、お久しぶりねヘル。数百年ぶりかしら」 「ごきげんよう、輝く髪の持ち主。貴女は私、私は貴女。ねえ、管理人を知らない?」 「彼なら、億万長者のところへ行ったわ。なんでも乱暴者の眼鏡を直すのに、ガラスが足りないとかで」 「ありがとう、助かったわ」 そう言って、ヘルはいい女の風呂場をあとにし、億万長者の部屋へ向かった。 トントンと扉を鳴らすと、「フゴフゴ」という声が聞こえた。 扉を開けたそこには、見栄っぱりの壮年、億万長者が玉座で君臨していた。 「ふごふご、これはこれはヘルではないか。金がいいか、宝石がいいか」 「ガラス玉を貰っている暇は無いの長者、管理人はどこ?」 「フゴ!? 今、なんと言った!?」 「え?」  
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