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「ここは……エリュズニルの館?」
ヘルが気がつくと、隣には子犬のフェンリルの姿があった。
洋館に近いそこは、出入り口の存在しない館、エリュズニル。
死の女王、ヘルの心に存在する人格の館だった。
1階に3つの扉、正面の大階段を上るとさらに3つの部屋が存在し、計6つの扉がある。
「一体なにが起きたの……」
ヘルが記憶を辿ると、覚えているのは煌めく光のみだった。
「私は切られたような……」
記憶を辿っても仕方ない、そう思ったヘルは館の階段を見据えた。
「誰か! 誰かおらぬか!?」
「あー、うるさい」
2階の扉から、1人の女が出てきた。
「ああ、乱暴者。何が起きたか教えておくれ」
乱暴者と呼ばれた女は、不機嫌そうに眼鏡を外し、寝巻きでそれを拭いた。
「誰かと思えば、ヘルのお嬢さんかい。あたいはずっと眠っていたんだ、知らないよ」
「お願いだ、教えておくれ。私の身に何が起きた?」
乱暴者はあくびをして、髪をかいた。
「何度も言わせるな。知るか。あたいは昔やらかしたことを責められ、ずっと部屋に軟禁されてたのさ。外のことのほとんどは、あんたが知っているだろ」
「それが思い出せないのだ」
じゃあ、探偵にでも聞きな。乱暴者はそう言って、扉の戸を閉めた。
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