プロローグ

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ポストを見ると、広告がいつもより多かった。 そろそろ歳末商戦だからだろうか。一枚を何気なく手にとりつつ、部屋へ入る。 「ただいま……」 とりあえず言うだけ言う。返答は無論、ない。 それほど広くない部屋にあるのは、古びたちゃぶ台とベッド。 そして、この部屋で最も高価な一角――テレビ周りのゲーム類。 若者とまだ呼ばれるこの歳で、俺は趣味らしいものをほとんど持ち合わせていない。 必然的に、ものは少なくなる。まあ、広くないのだから、ものが多いよりマシなのではないか。 等と考えつつ、台所へ向かう。目的は電子レンジ。下の粗大ごみ置場にあったものを直して作り上げた、人生最高の電子工作品だ。 我がマスターピースの中へ、夕食となる弁当を入れ、スイッチをオン。
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