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この寒空の中だ、きっと弁当は冷めてしまっただろう。
なので時間を長めにする。無駄な長さになった気がしたが、ちょうどいい。
暇つぶしに先の広告をみる。
これを隅から隅まで見れば、温め終わるだろう、と考えながら。
が、おかしい。
白いコピー用紙の上に、印刷がなされている。
黒い明朝体で、ただ『シリアルナンバー:0003』と、だけ。
「悪戯か……?」
この辺りには学校があり、このアパートの前を通る学生は少なくない。
中学生くらいなら何か計画でも立ててやりかねない悪戯だ。
「……」
しばらく考えていると、沈黙を破るように携帯が鳴った。
[着信:丸刈]
「もしもし?」
『おう、辰也か?』
丸刈勇介。俺の唯一に近い友人(複数でないので『友"達"』ではない)だ。
ちなみにばりばりのロン毛。
「どうしたんだ?」
電話が来ることは、珍しくない。内容が下らないということも。
『黙ってテレビ点けてくれ。NHKだ』
「ついにお前も国営放送デビューか……」
『非常に残念だが、そうじゃねえ。今回は俺の宣伝じゃない』
丸刈は『ピザ勇介』という芸名でテレビに出演している芸能人だ。丸刈⇒マルゲリータ⇒ピザ、というわけだ(本人談)。
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