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「椎乃さん、今日は体調は大丈夫なんですか?」
白い建物の一角、緑が集まった木陰に一人の女性と少女が座っていた。
3月の昼間とはいえ、まだまだ寒いせいか、女性は萌黄色の暖かい色合いの膝掛けを膨らんだお腹を守るようにかけてある。
少女は制服の上にコートを着込んで、貰ったばかりの薬の袋を膝に乗せて女性の隣に座っている。
少女の名前は、木崎神夜(きざきかや)。
近くの私立に通う17歳の少女であり、この病院の古株である。
身体が弱く、週1回行く病院で隣に座る女性、椎乃さんにであったのである。
椎乃さんは、美しい人だった。
日に透かしても黒く、むしろ、青くさえ見えるぬばたまの黒髪に。
傷一つない象牙色の肌。
なかでも、少し灰色がかかった瞳は優しい光を放っている。
スラリとした身体は、今新たな命がお腹に宿っている。
穏やかな雰囲気も手伝って、その姿は、神夜には、とても眩しいものに感じた。
「お医者様がいうには、もう、産み月を迎えてるから、いつ生まれてもおかしくないのよねー。」
愛おしそうにお腹を撫でている姿は、その中にいる、胎児に対する愛が見て取れた。
「赤ちゃん、産まれたら見に行きますね。」
まだ、見たことない椎乃さんは、さぞ可愛らしい顔なんだろうと興奮して言った。
「もちろんよ、ほら、神夜お姉ちゃんも待ってるのよ。元気に産まれてきてね。」
~製作中~
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