雅の失恋

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「どうするって、そんな…」 ーーーどうする…? 「こんなあやふやなままにしておくわけにもいかないでしょ?今のうちにはっきりしておかないと…雅?」 …今までにも何度か考えたことがあった。 でもその度に現実から逃げていて… ーーはっきり…させなきゃ。 決めた。 「雅?大丈夫?」 「うん……よし!ありがとう奈々!…明日、幸一と話し着けてくる。はっきりさせてくるね」 「…うん、それはいいんだけど、どうしたの急に」 「何かが吹っ切れた…」 「賢者モード突入ですか!」 店員の顔じゃない、奈々のツッコミじゃない。 なにが面白いわけでもなく、二人で顔を見合わせ笑いあう。 「スッキリできてよかったね。 明日…頑張りなよ」 「おう、任せとけ!」 口元に緩く微笑みを浮かべた雅の目は、キッとなにかを決意した後の目だった。 『雅にとって、一番いい結果に届きますように』 奈々がこっそり心の中で唱えた言葉。 それが雅に直接伝わることはないが、お互いの表情で届いた。 「お待たせしました、エビドリアです」 コトンと音を立て、湯気の上がるドリアが雅の前に置かれる。 「さ、それ食べたら帰ろっか」 「うん、ごめんね奈々。いつもありがとう」 「いいえ、お気になさらず。あんたの世話係ももう慣れたわ」 「あー、またそんなこと言うー!」 『はははっ』と制服姿の二人が笑いあう。 ーーなるようになるさ。 昔、誰かが言った言葉。 さぁ、明日は決戦の日。
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