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「体育祭が近くなりましたね~。
総合委員は学級旗制作が始まるので、今日の放課後から活動を始めてください」
下校前のSHRで担任の話を聞き、雅は眉間に皺を寄せる。
5月も中旬に指しかかり、一人浮かれている和の横で、雅は大きなため息をついた。
「はぁ~」
「おい、どうしたんだよ。体育祭だぜ!?競争だぜ!?燃えるぜえええええ!!」
「だから憂鬱なんだけど」
「あ、そっか。俺ら総合委員だもんな」
「旗作りがあるー…」
「……おい!な~に言ってんだよ、雅さん!あんたもすみに置けないね~、このこの~!」
「ん?」
「2組の総合委員といえば、雅さん愛しの愛しの桜庭くんじゃなあ~い!
や~ん、職権乱用~うふふっ」
「……うぅっ。
ちょっとそういうこと教室でしかも大声で言わないでよ!」
ジロリ。
クラスの女子の刺すような視線が痛い。
2組の桜庭幸一(さくらば こういち)といえば、一年のときからかれこれ7ヶ月程度付き合っている雅の彼氏だ。
「いいよな~。ラブラブ。しかもこれから一ヶ月間は仕事も一緒。放課後は一緒にお手て繋いで下校でちゅか~?ふんっ!」
ラブラブ という言葉に雅が顔をしかめる。
「ん?なんだよ」
「…………倦怠期」
「…………マぁージでっ!!うおー!そっかー!倦怠期なのかぁー!」
和が雅の目をじっと覗き込む。
「…なに」
やがてにた~と笑い…
「ドぉ~ンマイっ!」
「……………………」
「お?」
「うるっっっさあああああああい!!」
「うぎゃあああああ!!!」
そして和は…中略。
後に聞いた話によると、和の叫び声は桜庭の教室を越え、一番奥の教室に居た大今の耳まで届いたという。
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