雅の失恋

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酔うほどの人を掻き分け改札を抜け、寄る予定だった本屋を素通りして帰宅した。 「ただいま・・・」 「あぁ、雅おかえり。今日は早かったのね」 「和達が部活だったから寄り道しないで帰ってきたの。体調悪いから部屋で寝てる」 母にそう告げると、返事を待たずに雅は自分の部屋への階段を登っていった。 「え、大丈夫なの?ちょっと雅!?ご飯はー!?」 下から母の声が聞こえる。 今はそれさえも鬱陶しく思え、そんな自分に嫌悪感を感じた。 ーーーあぁもうっ! 「後で下りるからまだいらない!」 「・・・はいはい」 八つ当たりしかできない自分が一番鬱陶しい。 自分自身に対してのイライラと、幸一に対するイライラが混ざり、さらに気分が悪くなってくる。 雅は自然と鞄の中から携帯を取り出した。 プルルルル....プル.... 『はいはーい、もしもし?』 「・・・奈々?」 『ん?どうしたん?雅また元気ないなー。桜庭くんかい?』 「・・・うん」 『放課後のことでしょ?佐藤はなえ達と騒いでたやつ』 「・・・はぁ・・・」 『あぁー、もう、いっつもの強気はどこに行ったのよ』 「別に騒いでただけなら問題ないんだけどね、その後に・・・・・・ズズッ・・・うぅっ・・・」 『あらら。その後にも何かあったの?』 「っ・・・うんっ・・・うっ・・・」 『雅ぃー・・・』 「・・・・・・っ」 『・・・んー・・・雅、今から暇?』 「・・・え?」 『気分転換にお茶しに行こーよ!今日はランランも居なくて一人で帰ったんでしょ?』 「う、うん」 『はい、決まり!じゃあバス停に集合で!』 「え・・・ちょ、」 ツー ツー ツー・・・ 「・・・ははっ」
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