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「もう、ロイド君遅いよ!
やっと陸が見えて来たんだし早く行こうよ、というか私先に行ってるね?」
「いや、待て何かがおかしいだろ。
何でこの海流の中をお前はスイスイと泳げるんだ?」
こちらからは触れる事さえ不可能なのにあちらからは一方的に攻撃できる、海坊主とか言う訳の分からないモンスターに船を壊され、
暗雲立ち込める雷の止まない嵐の海に放り出されてから約2時間が経過。
他の奴らがどうなったかは分からないが、オレは気絶して近くに落ちて来た奴──唯を連れて陸を目指していた………のだが、
途中で目を覚ました唯は自分で泳ぐと言って何方向にも体が引っ張られ自由が効かないはずの海流をまるで人魚の如くスイスイと。
最早スイミングをやってましたから程度で済む海流じゃないだろというツッコミを他所に、
唯は既に豆粒程の大きさにしか見えないくらい遠くへ行ってしまっている。
…………流石は時也の女、逞し過ぎる事この上無しだぜ。
「うげぇ、マジ疲れたし全身びしょ濡れで気持ち悪ぃ。」
「こういう時こそロイド君の出番でしょ?
このままじゃ私風邪引いちゃうしさっさと火を起こしてよ。」
いや、お前は絶対に風邪なんて引かねえよと言いたいところだがそれは胸の内にしまい込み、
浜辺付近に生えていた枯木をぶち折り砕いて燃料にした。
そして焚火と言うには些か豪快過ぎるような炎の前にオレは脱いだ服を翳して乾かすが、何故か唯は服を乾かそうとはせずジト目で睨んでくるだけ。
一体何だってんだ。
「…………服の濡れた女の子が目の前にいるんだからさ、シャツを貸してくれたりとかしないの?
それとも何、ロイド君は私に裸になれと?
時也君だったら多分さりげなく何か羽織らせてくれるのになー。」
「…………気がきかなくて悪かったな。
でもオレはお前の裸には興味無いから、風邪引く前にさっさと────」
「デリカシーの無いYouに天誅!!!」
舌噛んだ。
意外って言うかあの細い体のどこにそんな力があるのか、結構な強さで振り下ろされた踵落としに舌を噛んでしまい、
普段喋っている時に時々誤って噛んでしまう何倍もの痛みにオレはしばらく砂浜を転げ回った。
鈍痛鈍痛鈍痛鈍痛鈍痛鈍痛鈍痛。
マジ地味に痛ぇ。
「全くもう、これだからロリちゃんが苦労するんだよ!」
「何でそこであいつの話が出て来るんだ?」
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