鬼夜叉

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あんな事とは、何故今オレが焼き払った村は蝿の帝国のような死の世界になってしまったのかという事だろう。 「よっぽど腹を空かして無い限り獣が狩りで人里を襲うなんて事は有り得ないから、 十中八九盗賊の仕業だとオレは思うね。 金とか子供とか盗れる物を盗った後生き残った奴らを全員殺して、 そのまま誰にも見つけられず腐ったのを蝿に見つけられたとか、そんな感じじゃね?」 盗賊か何かが村を一つ殺しても誰にも気付かれず処理もされないまま蝿の帝国になった事から察すると、 この国は今地方を気にかけるだけの余裕がない。 中央で後継者争いか何かが起きていて、かなり国が乱れてるんじゃないかと思う。 「…………欲しい物は盗ったんだから、わざわざ命まで取る必要は無いのに…………」 「それは平和ボケした日本で生まれ育ったからこその考えだ。 中東なんかじゃ宗教間の争いやら何やらでガキにまでライフルとか持たせてる訳だし、欲しい物があるなら殺して盗った方が楽なんだよ。 人を殺しちゃいけませんなんて、明日が来るのは普通の事と思ってる恵まれた奴らだけさ。」 今の言葉にはオレ個人の感情が少し入ってしまい、これだと唯を何も知らない幸せな奴とい皮肉に聞こえると気付き、 慌ててオレはそういう意味で言ったんじゃないと言い訳しようと思ったが、 どうやら唯は今オレが言った内容に衝撃を受けそれには気付いていない様子。 なので言い訳する必要は無くなったが、オレは本当に今のを皮肉で言ったつもりはない。 むしろ今のを聞いて衝撃を受ける唯のような奴だけだったらどれだけ良いかと、理想として言ったのだ。 …………無理だろうけどな。 「…………普段と違って哲学的な言葉がスラスラとロイド君の口から出る事に驚きを隠せない私がいる。 本当に″あの″ロイド君だよね?」 「今のを聞いて何を考えてるのかと思ったらそれか。 慰めの言葉をいくつか用意しておいたオレの優しさを返せ。 つーかあのって何だよ?」 自分の中にある常識から外れた内容に衝撃を受けて沈んであると思ったらこの切り替わり。 確かに重い話ばっかで正直終わらせたいとは思ってたけど、マジで予想外過ぎる。 時也に唯の扱い方を聞いておくべきだったと本気で思った。 「″あの″は″あの″であってそれ以上でもそれ以下でもないんだよ。 まあそれは置いておいて。」  
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