鬼夜叉

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「違う、違うんだよロイド君。 あれは天狗って言う日本の昔話とかによく出て来る結構ポピュラーな妖怪だよ。 有名所で言えば、義経記に乗ってる牛若丸を鍛えた鞍馬山の天狗とかね。 他にも地域に根差した伝説とかに天狗が出て来るらしいけど、実物を見ると────」 見ないように見ないようにと気を逸らすために天狗についての解説をしていた唯だが、 最終的に見てしまいシュール過ぎると言って吹き出した。 そんなに面白い物か? 確かにあの長い鼻と光沢がある赤い顔は見てると────ヤベェ、笑えるわ。 『人間の分際で儂を愚弄するとは…………許せん!!! 貴様らはここにあった村の人間達のように肝を生きたまま喰らってやるだけでなく、 両手両足をもいで達磨にして飾ってやる!!!』 いよいよ怒った天狗は顔を更に赤く…………はできないが背中に白い翼を生やし、 右手に持っていた団扇のような麻をオレ達に向けて扇ぐように振ってきた。 「ほら唯、いつまでも笑ってないで避けろ。」 「あ、アイアイサー。」 しかし一年もこんな世界にいたら、相手の形状やアクションでどんな攻撃が来るかは大体予想がつく。 団扇みたいな麻と離れた場所からそれを振るというアクションから推測すると、 突風を起こすとかそんな感じだろう。 オレと唯は直ぐにその場から離れ、一瞬遅れて予想通りの突風がそこを吹き抜け砂塵を舞い上げる。 「今言った言葉の中にちょいと聞き捨てならない事がいくつかあったけど、 とりあえずはその自慢の鼻をへし折ってからだな。」 言葉を交わさずともオレと唯は前衛後衛で二手に別れ、オレは唯が魔法で出した光の床を足場に、 地面から5m程の位置で滞空していた天狗に跳躍。 タップリと聞きたい事があるので殺す訳にはいかないため、炎は纏わず普通に腕力のみで殴りかかるが問題無いだろう。 あの折って下さいと言ってるような長い鼻を殴って折れないなんて事があるだろうか、いや無い(反語)。 「折れないから自慢の鼻だ、って言う台詞をどっかで聞いた事があるけどお前にゃ無理だろうな!!」 最後に唯が丁度良い場所に出してくれた光の床を蹴り、下手すれば地上でやるより力が篭った一撃を天狗の自慢の鼻に────当たらない。 「あぁ!!?」 スカッ そう表現するのが正しいくらい華麗にオレの拳は何を捉える事もできないまま天狗の鼻を通り抜けた。
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