鬼夜叉

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『フンッ、一瞬ヒヤッとさせられたがよもや陰陽師ですらない普通の人間の身で我に────妖怪に手を出すとはな。 身の程を知れ、愚かな人間よ!!』 滑稽を通り越して最早芸術的と表現するに相応しいスルーのされ方をされたオレは、無防備にも程がある隙だらけの体を天狗の前に曝す羽目に。 タコ殴りバーゲンセール、今やっとかないと損ですよ!! と言ってるのも同然なチャンスを見逃してくれる訳がなく、天狗は分厚い木製のスリッパ的な物(下駄と言うらしい)で踵落としをしてきた。 強引に体を捻って回避しようとする努力も虚しく、首の後ろへ的確に踵を振り下ろされたオレは高さ5m程ある位置から真っ逆さまに地面へと。 よく漫画等にある、素早く後ろに回り込んで手刀を首の後ろに叩き込んで気絶させるって言うのは中々理に適ったもので、 実は首の後ろには脊髄という脳からの指令を体中に伝える重要な神経の集まりがあり、 そこを細い針か何かで刺されれば死ぬくらいなのだ。 つまり何が言いたいかと言うと、一応骨で守られているとは言えそんな場所へ的確に踵落としを喰らったオレは、 意識が飛ぶまででは無いにせよ体の自由が奪われろくに受け身も取れないまま地面に激突。 まさかだ。 コイツも海坊主と同じく攻撃が擦り抜けるとかまさかのパターンだそれは。 「─────ッ、痛ってえなチクショー!!! 頭から落ちてたらどうなってたかテメッ分かってんのか、アァン!? …………チッ、ヤベェなこりゃマジで全力で逃げるしか────」 【※警告※ パーティーの中にHPが5%以下となったプレイヤーがいます。 速やかに回復する事をお勧めします。】 「更にヤベェ!!!」 一撃でHPが5%以下とか何の冗談だよ!!? つか、今のでもう少し当たり所が悪かったら…………オレ死んでた? そう思うと全身に氷を当てられたような寒気が走り思わず震えたくなるが、天狗はどうやら震える時間すらも与えてくれないようだ。 「オイ、唯!!! マジでHPヤバいしあと一撃喰らったら確実に死ぬから回復頼む!!!」 「分かった、じゃあ人を呼んで来るからロイド君はあと少し頑張ってて!!!」 「オィィィィィィィ!!! 違うって、回復だって!!! もうこの際逃げるのは止めないから、HPの回復だけしていって─────」 『下等なる人間よ、覚悟しろ!!!』  
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