いざ岡豊城へ

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百段に騎乗した二人は、意外と普通のカップルの様に語らっていた。 元親「どうだ?人生初の馬は?」 朔美「意外と乗り心地良いよ、それに思ったより過激な揺れは無いから。元親って初めて馬に乗って合戦に出たのって、何歳の時なの?」 元親「ああ、初陣か?俺は22歳の時に土佐・阿波の国を、長宗我部家が統べるための戦が最初だった。本来の武将は15歳になれば元服して合戦に出陣するが、俺はその時は槍一本さえ振れなかった上に、剣や槍の稽古をせず、家で繕い物とかをやっていたのだ。それに因んで俺に付いた通り名が“姫若子(ひめわこ)”だ、要するに“良い歳の男が合戦の稽古もせずに、家に引き篭って女の仕事をしている”という意味で周囲からナメられていた。」 朔美「そうだったんだ、十代の時は辛かったんだね。でも元親はその時代には、あまり居ない優しい男のコだったのね。他人の命の尊さを人一倍感じてしまうような優しい御仁か、それもそれで良いんじゃない?“己の欲せざることを他人に施すこと勿れ”って言葉があるじゃん、そん時の元親って“自分がやられて嫌なことは相手にとっても嫌なこと”ってのを知っていたから、人として良いと思うよ。」 元親「……、この俺を庇ってくれてるのか!?初陣が二十歳過ぎての脆弱な俺を…フッお前は何て言う良い女だ。俺はますますお前が欲しくなった。速度を上げるぞ、しっかり掴まってろ!!」 朔美「わかった」 元親「震わすぞ!!!」 元親の言葉の後に馬が速度を上げて走った。
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