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翌年も、城西駅にはいつものように淡々と業務を行う蒲田の姿があった。
『1番線停車中平方行きは後続急行と待ち合わせ致します。
次に参ります列車は、急行の鹿浜公園行きです。』
停車中の列車から川崎が降りてくる。
「まさか、急行を見るとはな。」
「あなたは運行科主任ですか…。お疲れ様です。」
「君もありがとう。」
言葉少なに別れる二人だが、信頼が見えるその様子は、かつての赤字に苦しんだ周防電鉄の姿ではなかった。
地域密着を謳った鮫洲社長の新方策、乗客の命と会社を救った猫は、話題と成功を呼び、創立以来初の黒字決算が目前だ。
鮫洲は語った。
「別に、私が手柄を立てた訳ではない。
辛い時期もあったが、今思えば車両故障も崩落事故も、神が猫の姿で最後に手を伸ばしてくれたのかも知れないな──。
そう思えば、周防電鉄が歩んできた道のりも、そんなに悪くない……」
end
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