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学校が終わり、僕は彼女が待つ公園へと歩む。別に遠い訳ではないので、僕は緩慢な速度で進んでいた。
小学校はもう放課しており、住宅街に差し掛かると楽しげな声をあげる子供たちが僕の脇を通り抜けていく。
その姿を見ると、自分にもあんなに無邪気だった頃があったのだと、年寄り臭いことを考えてしまう。
まだ昔を懐かしむような歳でもない。だが、そう考えてしまうとは、老けたものだな。
そういえば、岩倉はどんな子だったのだろうか。目立たなかったのは、写真を見て分かるのだが。
昨日アルバムを見ていて、気になったことがあった。彼女は笑っていなかったのだ。何枚かある写真の内、ただの一枚もだ。
やはり、彼女は精神的な問題を抱えているんだろうか。話した感じは、別段普通だったと感じたのだが。
知り合ったのも何かの縁だ。何か彼女の力になってあげれるなら、出来るだけなってあげよう。
公園が見えた。彼女は笑顔で出迎えてくれた。
僕はあまり笑うことが得意ではないので、ぎこちない笑みを浮かべる。すると、彼女は声をあげて笑う。
「あはは、何、その顔!」
「笑ったつもりだったんだが」
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