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何とも重い話だ。僕は反応しづらく、視線を自分の手元に落とす。
それに気付いたのか判らないが、岩倉も黙ってしまった。気まずい空気が流れ、いてもたってもいられなくなった僕は、何か話そうと彼女を見た。
その時、彼女の手首がちらっと視界に入ったのだが、何かの痕があることに気付いた。思わず手首を凝視してしまう。
それに気付いたのか、岩倉は慌てて学生服を引っ張って手首を隠した。
「今見たの、忘れて。何も訊かない、思わないで」
笑顔こそ似合うはずの彼女が、忌々しげで嫌悪感に満ちた表情を初めて僕に見せた。
……訊かれたくはないだろう。あの痕は、どうみても切ったような跡だった。
彼女は、手首を切ったことがあるようだ。
彼女が不登校なのは、自殺を考えるだけの精神的な問題を抱えているからなのだろう。
普通なら、これで彼女が不登校である理由について答えが出ているように感じるのだが、僕は直感的にそれを弾いた 。
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