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その後は帰宅し、何事もなく一日が終わるものだと考えていた。しかし、晩御飯を家族で食べていた時だ。
「そういえば、一。岩倉さんのこと訊いてきたわよねぇ、何か岩倉さん宅とあったの?」
「いや、まあ何もない訳じゃないけど、大したことでもないよ。ただ気になったから訊いただけ」
母は長い黒髪を掻き上げ、不思議そうに唸った。父もまた、薄くなった頭を掻く。
「岩倉さんな、あんまりあそこの家族は見たことないな。だが、確か一と同い年の子がいたはずだな」
「そうね、何て言ったかしら?」
ふむ、両親もあまり知らないらしい。僕も彼女に会うまではその存在を知らなかったしな。相当会えるのは稀な家族のようだ。
「僕が会ったのは、冬美って名前の子だよ」
「あら? 冬美……。冬美、ねぇ。そんな名前だったかしら?」
「確か、あそこのお子さんは双子じゃなかったか。もう一人は、確か雪美ちゃんだったと思うぞ」
「あら、あなたよく覚えてるわね」
「滅多に会わないから、何かやたらと頭に残ってな」
両親は、それからご近所についての話について談笑し始めた。僕はその会話には興味が湧かなかったので、食事を済ませて部屋に戻った。
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