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部屋に戻ると、近くの街灯の光が部屋に射し込んでいた。カーテンを閉めていなかったようだ。
カーテンを閉めようとして、自然と目が公園に向くと、ブランコに座る人影が見えた。彼女だ。
夜も更けてきているのに、何故外に?
気になって仕方なく、僕は適当に白のパーカーと深い青のジーパンに着替えて外に出た。
公園に着くと、彼女がいた。夜空を眺めており、僕には気が付いていなかった。
だがある程度近付くとさすがに気が付いたらしい。彼女は身構えるようにしてこちらを睨んだ。何か様子がおかしい。
「何してるの? こんな夜更けに」
「……貴方、誰?」
「え?」
全くもって想定外の言葉に、僕は動きを止めた。しかし、直ぐに彼女の言葉の意味を理解した。
「ああ、失礼したね。僕は篠原一。君の妹さんの友人さ」
「冬美の? あの子に、友達なんていたんだ」
姉、父の話だと、雪美だったか。彼女の方は、随分内向的なようだ。喋り方も抑揚がなく、声量があまりない。ぼそぼそと話す、というのがしっくりくる表現だろう。
「貴方、あの子といて楽しい?」
「その質問には、はい、と答えよう」
「そう、楽しいの。どこが楽しいの?」
「そうだな、僕とは限りなく反対の性格だからこそ、彼女の行動と言動が面白い、と感じるんだ。だから、彼女と接すると楽しいと感じるよ」
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