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その日は、それで別れた。帰宅した後、僕は自分の言い回しを後悔した。
何だか、口説いているような気があるような言い方だったな。そんな気はないのだが。
自分の部屋で、ベッドに寝転がりながら、僕は悩みの種をどうするかを考えた。どう考えても、姉の方はともかく妹には不登校になる理由がない。
明るく、友人は直ぐに作れるタイプの彼女が、なにゆえに学校へ来ないのか。大体、リストカットの意味もよくわからない。
なんとも、奇妙なことに関わってしまったものだ。
次の日、学校で情報収集をした。もちろん岩倉家についてだが、まるで情報はない。
かつての友人、には会ったが、僕と同じく明るい子だった、程度しか分からなかった。
放課後、僕はあの公園へと向かった。すると、傾きかけた太陽に照らされながら、あの小さな公園のブランコに彼女が座っていた。僕を見るやいなや、つんと顔を背ける。
住宅街を背に、僕は公園の入り口で立ち止まった。
昨日の手首の痕を見たのが、糸を引いているのか?
少し気まずいような気がしたが、親からもお墨付きをもらった図太さで、いつも通りに隣のブランコへ腰かけた。
「いきなり大層なご挨拶だな」
「これが私の普通だもん」
こちらを意識しつつも、僕のことは見ようとしない。口を尖らせた横顔だけが見える。
「ふむ、何かした覚えはないんだがな」
「……あのさ、姉さんに会ったんだって?」
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