彼女と僕の出会い

2/10
前へ
/115ページ
次へ
 夕焼けが、道を射す。橙色の光が視界を覆うのは、さながら僕を家に帰らせたくないためのようだ。  紺のスクールバッグを肩に下げ、僕は帰宅するため道を進む。  灰色の塀が道を挟んでいる。住宅街だから仕方ないのだが、そのせいで道幅は狭い。車は滅多に通らない道だが、車が通った時なんて、危うく轢かれる処だった。  もう少し、歩行者のことを考えてほしいね。  そんなことを考えながら歩いていると、自宅に着いた。  ドアには必ず鍵が掛かっているから、鍵を学生服のポケットから取り出し、鍵を開けてドアを開け、家に入ってドアを閉め、また鍵を掛ける。 「ただいま」  そう言えば、家の奥から「おかえり」と高い声が返ってくる。  靴を脱いで、家に上がってすぐ右にある二階への階段を上がり、自室に入った。  部屋に入って左に学習机があるため、スクールバッグを置いて、僕はそのまま奥に置いてあるベッドに倒れ込んだ。  眠い。今日は疲れた。  もっとも、部活をしている訳じゃない。勉強も死ぬほど頑張った訳でもない。  ただ眠い。それだけだ。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2670人が本棚に入れています
本棚に追加