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彼女に引き寄せられるように近付き、二つある内彼女が漕いでいないブランコに座る。
「何してるの?」
僕は驚いた。なぜなら、自分がしようとした質問を、彼女に言われたからだ。
「別に何もしてない」
「貴方、窓から見てた人だよね。私に何か用?」
あの距離で、よく分かったものだ。彼女は眼鏡を掛けていないし、視力が素晴らしくいいのかもしれない。
こちらを向いた少女は、黒髪のショートヘアで猫のような目をしている。体型はまだ未熟だ。女子用ではあるが同じ学生服だし、僕と同じく十五歳くらいだろう。
「用って程のことはないよ。ただ君が気になって」
「……口説いてる?」
「い、いや、そんなつもりじゃないんだけど」
「じゃあ、友達からね」
一瞬何のことか分からず、半開きの口を開くべきか閉じるべきか悩んでいると、彼女はまだ幼さが残る顔で笑む。
「付き合うにせよ、まず友達から。それでいい?」
「え、ああ……」
「私は岩倉冬美。貴方は?」
「……篠原。篠原一」
「一君か、良い名前だね。じゃあまた明日、同じ時間、同じ場所で!」
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