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「来てくれたんだ」
「まあね」
二人でブランコに腰掛ける。
「君は、不登校らしいな」
「あれ、知らなかったんだ?」
笑いながら話す彼女の様子から、触れてもいい話題らしい。
「なんで学生服を着ているんだ?」
「買って着ないのも、なんか勿体ないでしょ?」
「……学校に来ればいいじゃないか。そうすれば嫌でも着ることになるぞ?」
「うーん、そうしたいのは山々なんだけど、それは出来ないなあ」
「なんで?」
彼女が僕を見る。何も言わずに笑って、ブランコから降りた。
「ばいばい!」
僕が呼び止める暇もなく、彼女は走り去ってしまった。
学校には行きたくても、行けない理由があるらしい。
病気なのだろうか。しかし、外には普通に出て来ているし、血色も悪くなかった。見るからに健康児だったと思うのだが。
謎を孕んだまま、僕は帰宅した。居間に行くと、母がテレビを見ながら寝転がっていた。居間を経由して台所に向かう途中で、ふと思い立ったので母に話し掛けた。
「母さん、近所に岩倉さんっている?」
「岩倉? ……ああ、いるわよ。家から学校側に向かって、六軒くらい先にあったと思うわよ」
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