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そして放課後。
「隼人、いこっ?」
「おう」
帰り支度を終えた棗が俺にそう言って来たため、俺も立ち上がって棗と教室を後にする。
授業から解放されてハイテンションの棗を自転車の後ろに乗せて、俺たちは近くのゲームセンターへと向かった。
背中に棗の体温を感じて内心ドキドキしつつも、俺はいつもと変わらない態度で楽しんだ。
ゲームセンターに着くと、UFOキャッチャーや太鼓のゲーム、ゾンビを倒していくゲームが並んでいて、棗のテンションは更に高まった。
「ねぇねぇ何する!?あっ、あれ可愛い!」
棗は沢山のぬいぐるみが入った一つのUFOキャッチャーへと走っていく。
後を追うと、そこには到底「可愛い」とは言えないヘンテコなぬいぐるみがあった。
ハゲたバーコード頭からウサギの耳をはやし、バニーガールの格好をした親父のぬいぐるみ。
名前は「オジウサ」と言うらしい。
「……可愛いか?」
「キモカワ!」
「……。よっしゃ、任せろ」
俺は100円を投入してオジウサを取りにかかった。
クレーンが動き、オジウサ目掛けて降りていく。
そして。
「うわーっ、すごーい!一発で取れちゃったね!」
「おう!ほら、やるよ」
「えっ、いいの?」
「俺こんなのいらねぇよ。お前のために取ったんだから」
「わぁ、ありがとう!やったあ!」
そんなに喜んでくれるなんて、取った甲斐があったな。
満面の笑みを浮かべてオジウサに頬擦りをする棗を、心の底から愛しいと思った。
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