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胸にモヤモヤとした感覚を残したまま帰宅した俺は、さっそく棗に電話しようと携帯を見ると着信があった。
棗からだ。10分前に着信がある。
帰りが遅いから心配してくれてるんだろうな……マジでごめん。
心の中で一度謝り、急いで棗に電話する。
「もしもし、隼人?」
「うん。あの…遅くなってゴメンな?帰りに……玲香って子に会って、家まで送ってたんだ。…その、マジでごめんなさい」
「玲香?…あ、もしかして隼人の元カノの工藤玲香ちゃん?」
「え、そ、そうだよ。知ってんだ?」
「うん、もちろん。だってすっごく美男美女で公認のカップルだったもん」
「へ、へぇ…?」
…あれ?棗、怒ってない?
しかも俺が送ったのは元カノだって知ったのに、それでも怒ってない?
それが不思議でならなかった俺はもう一度謝った。
「もう友達になったとは言え、やっぱり元カノを家まで送るなんておかしいよな。そんな事されたら嫌だよな?ごめん」
すると、携帯の向こうからは「ふふっ」と楽しそうに笑う声が聞こえた。
「棗?」
「怒ってないからもう謝んなくていいよ。ちゃんと正直に話してくれたし、隼人が変なことするなんて疑ってないし、そんな人じゃないって分かってるよ。信じてるもん。
そりゃあ~…ちょっとはヤキモチ妬いちゃったけど…。
でも、女の子を夜道に残せなくて送って来たんでしょ?そう言う隼人の優しいところにも惚れちゃったのは私なんだもん。やめてなんて言わないよ。
でもでも、他の女の子よりも、私に一番優しくしてね?」
なんてね!と明るくそう言った棗に呆然とする。
あまりにも嬉しくて言葉を失った。
こんなに信用されたのは初めてだ。こんな風に言ってくれる子を裏切る奴なんて居ないだろ。
俺は思わず微笑んで「ありがとう。大好きだよ、棗」と囁いた。
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