64人が本棚に入れています
本棚に追加
だけど今追いかけたところで俺にはどうする事も出来ない。
あんな風にしてしまったのは俺なのに、俺が元通りにすることは出来ないんだ…。
中途半端なことをすれば、それこそ……。
結局俺は玲香を追いかけなかった。
その日の夜。
自室のベッドに寝転びながら、ピンク色の小包を上にかかげて見つめる。
食べてねって言ってたから食べ物なのだろう。
身を起こして可愛らしいラッピングをとっていく。
玲香はどんな気持ちでこれを作ったんだろう。そんな事を考えながら。
蓋をあけると、そこにはチョコなどで可愛くデコレーションされたカップケーキが一つ入っていた。
……玲香。
相変わらず器用だな。よくお菓子とか料理とか作ってくれたよな。
痛む胸に気付かないフリをしてカップケーキを一口かじる。
口の中に甘い香りが広がっていく。
……ん?
二口目をかじった時だった。口の中に違和感を感じた。
なんか…ジャリッて……うわ、なんだこれ!
あまりにも不愉快な感覚に口の中のものをティッシュに吐き出す。そして絶句した。
――おい、冗談だろ?
そこには大量の黒い髪が短い状態で何本も散らばっていた。
まるで食べやすいように短く切られたかのようだった。
「う……うわぁぁぁ!」
一気に胸が気持ち悪くなり吐き気を催す。
口を押さえて残りのカップケーキを力の限り壁に投げつけた。
するとベシャッと音がしてカップケーキが飛び散る。すると、黒い髪が何本も同じように飛び散った。
「なんだよ……なんなんだよ!!」
不快感が頂点に達した俺はカップケーキが入っていた箱も投げつけようと持ち上げた。
すると、箱の中に手紙らしきものが入っているのに気付く。
最初のコメントを投稿しよう!