きれいならばそれでいい

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「それは致死量の愛ですか?」 「え?」 「君が、死ぬくらいの、愛?」 唐突に僕は切り出した もう彼女と付き合って半年になる 「どうして?」 「さよならを言う勇気は要りません、よね?」 「うん」 僕の不安をかき消すように 彼女はニッと笑った。 でも (きみのことばはぜんぶうそ) 僕は知っていた。 「そういえば、前に言ったよね」 「何を?」 彼女は小さな声で続けた 「…こころが死んだらしあわせになれるというの?」 「…聞いたね」 思えば僕は 彼女にたくさん質問してきた 貴方のやさしさが、温かく突き刺した その傷を誤魔化すように。 「…誤魔化しじゃ、ない」 「何か言った?」 「…何も」 本当は、そう 僕は守るために壊した 彼女の中に在る何かを。 「ねぇ」 彼女は立ち止まる。 そして僕も立ち止まる。 距離は、1メートル。 「恋ごころってやつはちゃんと葬ってあげないと復讐してくるのです。」 「え?」 彼女の口から、零れた言葉は 誰かの言葉なのか それとも 「いつからか必死でしあわせなふりをしていた」 「…知ってる」 「だと思ってたよ」 彼女は悲しく笑う 「きれいならばそれでいい」 「…」 「あんた、いつもそんなことばっかじゃん」 「…ゴメン」 パンッ…。 彼女の右手が、僕の頬を掠めた。 「泣いてるって気づいてたんでしょ?」 「…うん」 「だったら何で…っ!!!!!」 君がきれいなら、 僕はそれで良かったのだ。 彼女の意志など一切排除して 「"君"が、きれいだったから」 僕は、君の"器"を守るために .
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