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……ふぅ、もっと無表情の特訓しないとな。
尚も時は過ぎ、放課後。
俺は帰り支度を整えながら昼の時と同じように情報を取得、展開する。今回調べるのはあの三人の主人公、その現在。
「っ……」
一人を調べていた時とは比較にならない程の、まるで鈍器に殴られたような重い傷みが頭全体を駆け巡る。
(……よし、奴らは各々離れて行動している。
身体状況、心理状況……うし、異常は無いな)
その鈍痛に耐えながら、一人一人の現在を調べ上げていく。
ま、当然思考だって情報だからな、読もうと思えば読めるさ。
(――よし、俺の下校ルートに被る奴はいない。
だが……)
一抹の不安は、残る。
奴らは軽々と予想外の行動を取るからな、油断は一切出来ない。
(なら……情報を現在地のみに限定、他は終了だ)
すると俺の頭の中に学校全体の地図が展開、その上では色分けされた三つの光点が動き回っていて、その一つに集中すればあら不思議、周辺の詳細な地図と共に沢村の詳しい位置が丸見えだ。
ちなみに奴は今、中庭にいる。
これが俺の能力の応用・その一。情報を制限してよりそれに特化させるという……まあ、一点集中な応用だ。
これをやると集中させた分凝縮させた情報(今回で例えれば位置情報だな)が展開されるんだ。
他の余計な情報を取り入れないから頭痛も軽くなるし、さらに普段より細かい情報が閲覧できるから、使い方によってはかなり便利だ。
(この光点を避けながら行かないとな……)
席を立ち、机に掛けていた鞄を持つと軽く級友に挨拶して教室から出、廊下を歩く。
現在地、二階廊下。とりあえずこの階に奴らはいない。
だが、油断は出来ない。出来る筈も無い。
俺は内心警戒しながら、しかし自然に歩いているように顔を作ってしばらく歩き、丁度階段に差し掛かろうとした――
(っ!)
その時。
それまで一階の廊下をうろついていた光点が急に階段に向けて動き始めた。
(このままだと鉢合わせになるな……よし)
常用の携帯を取り出し、いじる振りをしながら階段を通り過ぎる。
それと同時、
「脩くん、待ちなさい! 今日はわたしの買い物に付き合う約束でしょう!」
「知らねっての! 勝手にテメーが決めたんじゃねーかそれ!
つか女の買い物なんぞ誰が行くかかっこ悪ぃ!」
新島と奴の幼なじみがまるで疾風のような速度で階段を一気に駆け上っていった。
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