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恐らくは新島が昼にした約束を無視すべく一人で帰ろうとしたところを幼なじみに見付かり、結果ああなったんだろう。どうせ屋上で捕まって結局付き合わされる流れだろうに、無駄な事をする奴だ。
さて、一人は回避できたしさくさく進むとしよう。
丁度今日は新しいラノベと新刊の発売日だし、早くここから出て主人公対策用に購入しないとな……あと人も待たせてるし。
俺は携帯をしまうと階下の地図を確認しつつ一階に降りていった。
さて、一階にいる主人公の数は一つ。今は玄関より少し外れた廊下で止まっている。正確に言うなら職員室の一歩手前、と言ったところか。
まあ、消去法でいけば伊丹だろうな。昼も部員を確保できなかったし、また確保してこいとでも言われて人通りの多い玄関を観察しているのだろう。
しかしそうなると……困ったな。一度声を掛けられた俺は奴に勧誘されてしまう可能性が高い。
人ってのは関わりが深いと思っている奴に対して無意識に心の垣根を低める傾向があるからな。奴の記憶にも俺の顔が不確かながら残っているだろうし、明日になれば忘れるだろうが……ふむ。
周囲を見渡し、
「お」
見付ける。
あれならば奴の気を引けると判断し、寸後手早く携帯を取り出すとある番号へと電話を掛ける。
「うわっ!」
すると職員室から大きな電話のベルが鳴り始めた。
この学校、お年寄りな教師が複数人いる為ベルの音量は常に最大設定。さらに前来た生徒がきちんと閉めなかったのか引き戸が薄く開いており、そのせいで十分に人の気を引ける音量が、奴の耳に届いたのだ。
奴はびくつきながら職員室を振り返り、何事かと注目している。
よし、今の内に下校するとしよう。
俺は奴の側を気が戻る前に通り過ぎると靴を履き替え、途中で出た電話にちょっと鼻を摘まみながら「間違えました」と言って素早く切った後携帯をしまいながら外へと出た。
ああ、使った携帯はもちろんいつもとは違う物だ。
(これで新島と伊丹は回避…情報は、終了。
後は……)
足を進めながら、最後に残った沢村の位置を確認。
(うえ……)
すると、実にマズい事に。
(中庭から玄関へと移動中……思考情報、閲覧…うあ、マジか。
こいつも本屋行こうとか思ってやがるな)
幸い現時点では互いの距離は遠い。このまま下校すれば出会う事無く家まで帰れるだろう。
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