第一群 いわゆる一つの現状説明

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 だが―― (俺が買わんとしているラノベは即日完売必至の超人気作品! 今、ここで逃してしまえば次買えるのは一週間後になってしまう! 新刊はまだ明日中に補給されるだろうが、ラノベは……!)  ちなみにさりげなく近くの本屋の在庫状態を閲覧したところ、あと一時間以内には売り切れる冊数しか残ってない。 (ちっ、これなら取り置き頼んどきゃよかったな……)  しかし、文句を言っても始まらない。  俺は少し焦燥を心に宿しながらも人を待たせている校門へと、足を早めた。  程無くして到着し。 「なぁなぁ、んな来ない奴なんてほっといてさ、俺達と遊ぼうぜぇ?」 「そうそう、俺達の方がそいつより楽しませてやるからよ」 「……断る」  そこで俺は、やっすいチンピラにやっすい言葉で絡まれている待たせ人を発見した。  長く、腿(もも)の内側に掛かるほどに伸ばした黒髪に、愛らしい、ともすれば小学生に間違えられかねない顔と身長と声(とはいっても身長は小六ぐらいだ、流石に)。  そのくせ胸の発育だけは良く、それに合わせるように体つきもバランス良く整っている。  要するに、『合法ロリな巨乳』という冗談のようにふざけた表現が上無く当てはまるこの存在。 「……あ、兄さん」  その名も、佐藤深海(さとう・みみ)。正真正銘、血の繋がった一才下の妹である。  彼女は俺を見付けるととたた、と駆け寄り、隣に並ぶ。 「……はぁ。また、か?」  尋ねる。  すると我が妹は表情を変えず、頷きを返した。  ……見て分かる通り彼女は無表情かつ寡黙な女子高生で、人前だとそれに輪を掛けてあまり言葉を口にしない。その代わり感情表現は豊かだがな。 「ああ? んだてめえは…」 「俺達ゃその子に用があるんだ、悪いけどどっか行ってくんねえかな?」  おっと、今はそれどころじゃないな。この見習いたいぐらいのモブさを誇る学生不良達を何とかしなければ。  彼らとの距離は約三歩分と言ったところで、しかもよりによってこちらが校舎側に寄っている。これでは逃げようにも逃げられない。  何せあちらにはあのハーレム主人公がいる。しかも絶賛下校の途中。  奴に関わる事は目の前の良くない生徒達に殴られてしまうより嫌な事だ。  しかし、前にも言ったが俺はあくまでも普通の、喧嘩など強くもない一般学生。暴力で切り抜けるのは不可能だ。  ならばどうするか……
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