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……ん? なんだお前……え? さっき俺が鼻血を道端でいきなり流しているところを見た?
あちゃ、どうやら見られちまったみたいだな……能力を使いすぎたところを。
あ? 能力ってなんだ、てか? あー……しまったな、つい漏らしちまった、俺らしくもない。
ま、こうなったのも何かの縁。どうせ隠したって下手に探られるのがオチだし……いいぜ、ならいっそ全部話して、お前も“理解者”になってもらおう。
丁度俺も、今までを聞いてくれる誰かが欲しかったところだしな。他のは今更って気がするし。
……名前? いや、語り終えるまでは聞かねえよ。それまでは“誰かさん”って事にしとくぜ。
ああ、そうだ、話す前にちっと聞きたい事があんだが――お前、自分の『役割』を自覚した事あるか?
……ああいや、別に昔劇で木役とかをやったとか複数人で遊ぶ時に仕切り役になっただとかその場限りのそれじゃなくてさ、人生を通しての、宿命なんて言葉が当てはまる、そんな役割を自覚しちまった事は無いか、と聞いてんだ。
ほら、近頃の小説でもいるだろ? 「自分は脇役なんだ」と自分の世界での立場を自覚してしまう奴が。
けど、まだ奴らは救いがある立場だ。
何せ主人公に非日常を強制され、けれどそれでもまだ見せ場があり、そして上手く行けば脇役同士で結ばれて幸せになる、なんて美味しい思いを出来るからな。
正直、俺から見れば贅沢三昧の道を歩んでいるようにしか見えない。世界にはろくに見せ場も無く存在理由が唯一しかない、それでいて記憶にも残らない役割だっているのにな。
……さて、ここまで俺の与太話を聞いてくれた“誰かさん”にはもう分かっただろ?
……そう。そうなんだ。俺は気付いてしまったんだよ、……自分の存在理由、存在価値、いわゆる個性に。
自覚したのは大分幼い頃、まだ小学生にも満たない時分だ。
俺はその時親が読んでいた漫画を流し読みしていて……ふと、思ってしまった。
「あれ、この役自分なら楽勝じゃね?」
――と。
そして同時に……絶望した。
それも当然。何せその役とは、いわゆる一つの『説 明 役』だったからだ。
そう。説明役。
大した理由も無く主人公達の非日常に巻き込まれて生活を乱され、説明以外に大した見せ場も無く、加えて大抵が最終回までに消えるかもしくは恋愛や覚醒も出来ずに使い潰される、あの最低最悪な立場の、説明役だ。
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