第一群 いわゆる一つの現状説明

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(あった。こいつだ……えっと、新島脩悟(あらしま・しゅうご)。 ワイルド系イケメンで喧嘩も強く、その戦い方と髪の色から『赤鬼』と呼ばれ、恐れられている。 基本的には授業に出ず中庭や屋上で寝ていて、教師の言う事などまったく聞かないが唯一心を許している幼なじみの女子の言う事ならよく聞く、と。 典型的な不良系主人公だな。 こいつにも関わりたくない、却下だ)  主人公帳を閉じ、仕舞う。 (とすると……ふむ、今日は教室が無難だな。 よし……)  携帯を取り出し(まだガラケーだ)、メールを書いて送信。内容と送信先はまだ秘密だ。 「おーい、メシ食おうぜ!」  その後メモ帳をブレザーのポケに入れると残っている弁当組の知り合いに声を掛け、そいつらと机を囲んで昼食を始めた。 「最近どうよ?」 「あー? まあぼちぼちだな。 レージは?」 「俺もフツーってとこだ。 でさ、昨日の……」  ああ、この何気無い会話、特筆すべき事が無い程の和やかな時間。これが最高に嬉しい。  平和とはこうも穏やかな時を指すのだと、心から実感できる。流石に緩むとアレだから演技してるけどな。  と、そんな時。 「あ、あの……」  一人の、気弱そうな少年が俺含む弁当組に話しかけてきた。  同時―― (ヤバい、こいつは……!)  俺の主人公感知機能が反応(経験で培ったそれだ)、脳内に最大級のアラートが鳴り響く。  ……この細い、およそ男らしさがほとんど見当たらないショタ少年。  こいつは伊丹藍馬(いたみ・らんま)という、人にものがはっきり言えない、いわゆる成績不良、下位常連の落ちこぼれヘタレ系主人公だ。  それだけならまだ良い、いや、既に主人公である時点で大罪だがそれはさておき。  こいつは数ある主人公の中でも特に説明を必要とするカードゲーム類に属する、俺にとっては最大に忌むべき属性を持っているのだ。  大方ここに来たのだって未だ募集を掛けても集まっていないカードゲーム部の部員勧誘を、まずは同じクラスからしようと声を掛けたのだろう。  その証拠に後ろを見てみろ、ヤツの勝ち気系幼なじみがこいつに無言の威圧を送っている。アレは「絶対に一人は確保してこいよ?」という目だ、間違いない。  このままでは仲良く弁当を食べ、伊丹が中々言い出せなくてまごまごしている内に勝ち気が無理矢理割り込み、放課後部室に来いとかいう流れにハマってしまうに違いない。
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