それはまだ序の口で

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「大体何だその鼻声は。」 「それは俺が聞きたいんだ。何でこんなに風邪は俺のことが好きなんだろう。」 素朴に首を傾げる沖田に加藤は面倒くさそうに目を細める。 「という訳で薬ちょーだい。」 「五十両。」 「高っ!高いよ雪ちゃん!」 「今お前の相手をしている時間も加味すれば安い。」 「そんなに?!時間換算だなんて廓の女みたいだな。」 「お前が新撰組の沖田じゃなくて俺が剣士だったら首かっ斬ってやれたのに。」 「俺は俺が沖田で良かったと心底思うよ。」 心底くだらない会話である。 だが本人たちはそういう時間を非常に好いていたに違いなかった。 口では悪態つきながら、しかしダラダラする時間を理由付けてくれる双方の存在をお互いは認めざるをえなかった。 「そういえばさ、芹沢局長が夢に出てくるんだ。」 沖田は苦い顔をして茶を飲んだ。 「真夜中に血だらけでさあ、追いかけてくんの。」 「斬ればいいだろ。」 実際斬ったのはお前なんだろ、とは加藤は言わない。 あくまで憶測にすぎなかったからだ。
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