それはまだ序の口で

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芹沢局長が死んだのはつい最近の話で、長州藩士にやられたと聞いた。 が、加藤は何となく仲間内による計画だったのではと思っている。 沖田は組の誰某の話はしても仕事の話をしないから、知らないが。 だからそんな夢を見るのではと思ったが、元々沖田から自身の夢見の悪い話をよく聞くのもあって黙って聞くことにした。 「斬れないんだよそれが。何かね、こう手応えはあるんだ。夢なんだけど。でも斬ったと思って歩いてると後ろから追いかけてくんの。」 「怖ぇな……。」 「だろ?!昨日夜中飛び起きてガタガタ震えちゃったよ。」 「それ毎日なのか?」 「ううん、十日あったら一回くらいかな。」 「一割か。出演率高いな。」 「ま、慣れる気がするけどね、そのうち。」 昨日ガタガタ震えちゃった奴が言える予言なのだろうか。 加藤は楽観的な態度を指摘したくなったが、下手に気にされてもそれこそ付ける薬がないので口にするのをやめた。 「でもさ、あれ。あれだけは慣れないんだよ。」 「あれ?」 「殺される夢。」 神妙な顔つきから吐き出された言葉はあまり毛色のいいものではなかった。 沖田の夢見の悪い、最も代表的なのが、加藤もよく聞く「殺される夢」だ。 小さい頃から幾度となく見る己の死の仮想体験は、本当に心地の悪いものだという。 「色とか、こう息が苦しいのとかすげえ現実的でさ。やっぱり跳ね起きるんだけど、起きたら両手痺れてたり、気持ち悪いよなぁ。」 「疲れとか悩みがあると夢見は悪いっていうけど、昔っからなんだろ?」 「うん。体調崩した時はここぞとばかりによく見たから、そんなん関係あるかもね。」
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