それはまだ序の口で

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「じゃあ今日あたり見るかもな。」 意地悪してやると、期待通りに沖田が顔をしかめた。 「嫌だよ。嫌なこと言うなぁ!何かそんな予感するもん。」 「じゃあせめて薬出してやるよ。安眠できますようにってな。」 「やった!」 「試しに作ったやつだから保証はねぇよ。」 「ぬかった!」 全くのぬか喜びだ。 不愉快な奴はどっちだろう、人が真剣に悩んだいるのに。 沖田はそれでも加藤に貰った怪しげな薬を懐にしまうと、今にも雨の降り出しそうな空の下を急ぎ足で帰った。 壬生村の屯所が視界に入ったとき、頬にぽつりと雨粒があたった。 濡れて帰れば余計怒られる。 砂利道を駆け出すとほぼ同時にピカリと空が光る。 「うわっ。」 雷だ。 思わず独り言をもらしたのは、雷が珍しいのと、沖田がそれを苦手としていたからだ。 大分遅れて西の方でゴロゴロと雷鳴がする。 地響きのようで、まるで腹の底を揺さぶるような感触が好きではない。 頓所の門番は沖田が走って帰ってきたのを辛うじて恭しく迎えたが、彼等もそれを苦手としているのは間違いなかった。 「あー!いた!総司!帰ってきたよ!土方さん!」 とりあえずほっとしながら玄関先で草履をぬいでいると、偶然通りすがった藤堂平助が目を丸めて沖田を指差した。 建物の奥に向かって土方さぁんと叫ぶのがうっとうしい。
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