それはまだ序の口で

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髪の先から伝って落ちる雨の滴が着物の膝を濡らす。 草履の紐を解いて立ち上がろうとした瞬間、頭頂部にずっしりとした重みを感じた。 ぴたりと沖田が動きを止めたのを確認してから、声が落とされる。 もう聞かなくってもその背後から押し寄せる不機嫌な気配で十分誰だかわかるのに、その声は惜しげなく沖田にこれからの展開を知らしめる。 「よう総司君。どこに行ってたのかな。」 土方歳三の部屋に連行されると思いきや、沖田がズルズルと引きずられてたどり着いたのは先刻抜け出した自室だった。 ぽいっと投げ捨てられた衝撃で肘が痛い。 文句を言おうと顔をあげると、部屋の中央の人物と視線がぶつかる。 「…何で烝くん?」 「何で?じゃないだろうが!」 烝くん、が質問に答える代わりに先程自分を投げ捨てた土方が後ろから怒鳴った。 耳が痛い。 雷の音の次に怒鳴り声が嫌いな沖田は後ろを向いて胡座をかくと、まるで居直った泥棒のように目を吊り上げた。 「お前は一体何遍言ったらわかるんだ?風邪ひいたんなら黙って寝てろ!勝手な行動をするな!はっきり言って迷惑だ!探す身にもなれ!」 「これくらいどうってことないってば!探してくれなんて言ったことないし、そっちこそ何遍言ったらわかんの?!」 「またそういう口の聞き方を…!」
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