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「状況把握とかどうでもいいから早く逃がした方がよくないか?」
「まぁ、それが出来ればいい話なんだけどねぇ……」
と、昌は部屋のスミに置かれたキャリーバッグに目を向ける。
さっきの横転でトドメをさされ、閉めることができないバッグがそこにあった。
「ビルの出入りは少ないものの、人の通りは少なくないこのビル前で、どうやって運ぶのさ?」
お姫様だっこでもしてみる? とおどける昌。
「……ていうか素直に警察に電話した方が……」
「犯人じゃないと証明できる? 状況的に犯人にされそうだけど」
……そう言われればできるかわからないなぁ。
「選択肢としては人が少なくなる夜中まで待つか、危ういけどこの子に事情を話して証人になってもらうかだね」
「……危ういって?」
「そんなの決まって――」
と、昌が言いかけたその時だった。
「……んっ……んん……」
少女が目を覚ましたようだ。ソファーから体を起こして頭をポリポリと掻くと大きな欠伸を一つ。
お嬢様って感じがしないのは気のせいか?
「あれ、ここはどこだ? ……えっと確か……私は……」
しばらく悩んだあと、掌にポンと拳を置いた?
「そうだ! 確か二人組に襲われて誘拐されたんだった!」
その割には緊張感のない回想だったなとかいうツッコミはさておき、自分の身に起こったことはわかっているらしい。
「名探偵 一条 麗(いちじょう れい)ちゃんは推理する! ずばり、お前達が誘拐犯だな!!」
ビシィ! と効果音が聞こえてきそうなくらいに勢いよく指さすと、自分の推理(と言っていいのかわからないが)に酔いしれてドヤ顔を見せつけてきた。
お嬢様って感じが全くしなかった。
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