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「んじゃあ実力行使で逃げてみる?」 昌は口角を緩ませて笑い、ポケットからあるものを取り出すと、素早いモーションでそれを投げつけた。それは真っ直ぐに飛んで行き、見事に顔の真横を通って壁に突き刺さった。 頬に血が少し垂れる。痛い。 「このように、あの男くらいなら簡単に殺せるから反抗しないのが賢明じゃないかなぁ?」 「お前、一歩間違ったら死んでたぞ! 俺が!」 「死ななかったからいいじゃん? むしろ殺さなかっただけ感謝してほしいよホント」 ケラケラと悪びる様子もなく笑う昌。 人を殺しかけて謝るどころか開き直って謝礼まで要求するとはなかなかの人間性である。 まぁ、期待はしていない。 俺は頬を垂れる血を手で拭って壁に突き刺さったものを引き抜いた。 黄色い柄のバタフライナイフ。昌が学生時代から愛用する道具である。 「とりあえず、どうする? 一条麗ちゃん?」 昌はさらにポケットから赤と青の柄のバタフライナイフを取り出して両手にかまえた。ナイフの刃と昌の歯がキラリと光る。 「……大人しくさせて頂きます……」 一条はソファーの背もたれにしがみついて縮こまった。さっきまでの威勢は全く見られない。 その畏縮する様を見て恍惚の笑みを見せる昌は言うまでもなくドSだ。
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