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「いや、運ばない……一条を誘拐した奴を捕まえるんだ」 「何を言うか。誘拐犯はお前達だろう? 」 そう言って一条は俺達をギロリと睨んだ。 冷たく、暗く、まるで信用していなかった。 明るく振る舞うには限界がきたというわけか。 「はぁ……」 昌が小さく溜め息をついた。 そしてそのまま真剣な表情で一条を見つめる。 「一応さ。自分達のことを誰にも言わないでくれるなら解放するって言ってるんだけどね?」 「それは断じて許さん。お前達の悪事はしっかりと裁かれるべきだ」 「そうかいそうかい」 昌は小さく呟いて鼻で笑った。 「何がおかしい?」 キッと一条が昌を睨む。 「いや。口約束なんて破っちゃえば簡単に解放してもらえるのになんでそうしないのかなってさ」 確かにそれもそうだ。解放さえされれば、あとは警察に任せて犯人は逮捕だ。律儀に約束を守る必要なんてない。 「何か、解放されて都合の悪いことでもあるのかな?」 「そ、そんなことあるか!」 「へぇ~ならいいけどさ」 と、声を荒くする一条を尻目に昌は俺の方を向いた。 「まぁ犯人がわかったら解放できる話でもあるよね」 「そう簡単に言うけど捕まえるのは俺なんだろう?」 「うん。そうに決まってるじゃん。他に選択肢はないよ?」 ……うん。そうだよな。そうですよね。 というわけで時間まで再びテレビを見ることにした。
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