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そんなこんなで昌と俺は高校を卒業した現在、一緒に便利屋を営んでいる。総従業員数二人の小さな便利屋である。
なぜこうなったのというのは、昌の思うままに事が進んでしまったから、と言っておこう。
某件某所、天王寺(てんのうじ)のビル街の一角、寂れた四階建てのビルの三階に『便利屋 野中寺』の事務所は存在する。
一階と二階のテナントは絶賛募集中だそうだ。元は不動産屋と法律事務所があったのだが、便利屋が出来てすぐに両方共閉まってしまった。理由は不明である。
おかげで寂れ具合は一層増してとても足を運びづらい環境になっている。
にも関わらず、閑古鳥が鳴いているわけではなく、むしろ忙しいくらいである。
情報管理は昌に任せきりなので、どうやって仕事を手に入れているのかはわからないが、とにかく休む暇すらない。
掃除、引っ越しの手伝い、ペット捜索、交通量調査、害虫駆除、素性調査、物品配達など、様々な仕事を請け負う。
さらに実際の仕事をするのはほとんど俺であり、昌は基本事務管理と楽な仕事しかしない。
理不尽な話である。
しかし、昌がいなきゃ仕事が入ってこないわけで、生活できないわけだから仕方ない話でもあるが。
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