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数分後。
携帯を片手に昌が戻ってきた。
「洋平君のお望み通り、仕事が入ったよ」
「それは今日の仕事か?」
すると昌は事務所の時計を確認して頷いた。
「そうだね。12時、あと一時間後にここに来るみたいだよ」
そこで俺も時計を確かめる。現在ジャスト11時。まだ少し時間がある。
しかしまぁ、お昼時に依頼ってのも珍しいな。
「あ、でもあんまり期待はしない方がいいと思うよ」
そう言って昌はニヤリと歯を見せて笑った。こうやって黒い笑いを見せるときは十中八九、まともな仕事ではないし、俺にとっていいこともない。
かつてはゴミ屋敷の清掃に向かわされたこともあった。たった一日中その部屋でいただけなのに、臭いが染み着いて一週間はまともに外を歩けなかった。もちろん昌は何もしていない。
ほかには、というか現在並行中だが、前の借り主が自殺したアパートに住むという仕事を取ったときも、昌は笑っていたなぁ。最近体が重く感じるのは気のせいにしておこう。
とりあえず、ろくな仕事ではないのはわかった。
「内容は? どんな仕事なんだ?」
「ん? ただの配達だよ?」
ただの、それだけ。と昌は後押しして自分の席に座った。
「じゃあ別に普通じゃないか?」
「ん~まぁね。ただ引っ掛かることがあってさ」
「引っ掛かること?」
「そう。しかも三つもある」
嬉しそうに語った昌に嫌気がさしたが、そんな俺に構わないといった様子だった。
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