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「ばあ!」
突然客間の戸が開き、まだ幼い男の子が俺に向かって走った。
オバサンの子供である、つまり俺のいとこだ。
名前は神谷 憂、6歳で、今年小学二年生、明日が誕生日だ。
「憂君!」
俺は憂君に押し倒され、馬乗りにされた。
いや、させてやった。
「隆兄!あやとり教えれ!」
「ならまず退けよ!」
必ず元旦には新潟に帰るため、憂君と会うのもこれで7回目か。
もう覚えて無い。
「あやとりしよあやとり!」
「退け!そして紐持っ来い紐!」
「ママ!隆兄が干物欲しいって!」
「ワザとだろ!ぜってワザとだろ!」
しばらくすると、オバサンが手いっぱいの干物を持って客間に入った。
オバサンは言った。
「あれ、隆は干物嫌いじゃなかったっけか?」
その通りだ。憂君にしてやらた訳である。
親戚の家で出された食べ物や飲み物は綺麗に無くすのが義務だ。
誰が決めた義務でも無い、しかし空気的にそうなっているのだ。
「はははは、食べますよ~‥」
俺はそう言いながら憂君の頭を思いっきり畳に押し付けた。
「痛い痛い痛い、ずみばせん、僕がだべまず」
畳と睨み合う憂君がそう言ったため、俺は手を離した。
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