お年玉の使い道

8/9
前へ
/9ページ
次へ
「ありがとう隆兄!」 まさか一年の内に二回も、このボロい玄関を拝むとは思いもしなかった。 「本当にいいのかい?」 抱きつく憂君の後ろで、オバサンは言った。 「オバサンにはお世話になったんで…いいんです」 「あやとりしよ!」 「あやとりか、いいだろう!新技、スカイツリーを見せてやろう!」 「スカイツリーって?」 「東京タワーの強化版だな、まあデケェってこった」 寒空の下、2人は紐を指に通しながら、白い息を吐いていた。 しばらくすると、母親が終了の声を挙げ、仕方なく車に乗り込んだ。 ありがとう! と後ろから聞こえる。 俺は振り向かず、ただ片手を挙げて返事を返した。 エンジン音が鳴る、そしてまたもや俺の目には、田舎の風景が通り過ぎて行く。 過ぎゆく車を見送った憂は、携帯ゲームを抱きしめ、笑顔で母親に言った。 「隆兄、僕がこのゲームカセット欲しかったの知ってたんだよ、昔ねこのシリーズのゲーム2人でやったの覚えてたんだよ!」 「そう、良かったわね」 オバサンは憂の頭に手を置き、車が走って行った方を見つめた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加