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「ありがとう隆兄!」
まさか一年の内に二回も、このボロい玄関を拝むとは思いもしなかった。
「本当にいいのかい?」
抱きつく憂君の後ろで、オバサンは言った。
「オバサンにはお世話になったんで…いいんです」
「あやとりしよ!」
「あやとりか、いいだろう!新技、スカイツリーを見せてやろう!」
「スカイツリーって?」
「東京タワーの強化版だな、まあデケェってこった」
寒空の下、2人は紐を指に通しながら、白い息を吐いていた。
しばらくすると、母親が終了の声を挙げ、仕方なく車に乗り込んだ。
ありがとう!
と後ろから聞こえる。
俺は振り向かず、ただ片手を挙げて返事を返した。
エンジン音が鳴る、そしてまたもや俺の目には、田舎の風景が通り過ぎて行く。
過ぎゆく車を見送った憂は、携帯ゲームを抱きしめ、笑顔で母親に言った。
「隆兄、僕がこのゲームカセット欲しかったの知ってたんだよ、昔ねこのシリーズのゲーム2人でやったの覚えてたんだよ!」
「そう、良かったわね」
オバサンは憂の頭に手を置き、車が走って行った方を見つめた。
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