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鈍痛。圧倒的鈍痛。傷は治りこそすれど、痛みだけはどうにもならない。
それがこの身体になってから解ったことだ。
「うぐがああっ……何をするんだよアリス。痛いじゃないか」
「いっ痛くなければ意味がないだろう。」
血の付いた金槌持ちながら、照れられても怖いだけだと僕は思った。
傷が塞がりきると、嘘みたいに痛みが消える。
「アリス、死ぬほど痛くても死ねないって苦行じゃないか。その……痛覚はどうにもならないんだな」
僕がそう言うとアリスは普段の表情に戻った。その豹変に呆気に取られていると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「やめとくといい。痛みがなければ、化け物ですらない。痛みがないなんてのは幸せでもなんでもない。ただの人間の妄想だ」
「そういうものなのか。まあ僕としてはそのまえに不死なんてごめんだぜ。怪我するのも、痛い思いもごめんだ」
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