不死者は学び舎の戸を叩く―転

4/14
前へ
/87ページ
次へ
「が、『想い』は私が人前に現れない限り生じえない。かと言って狂科学者共に切り身の標本にされてはかなわんからな。効率的なのは人間の協力者を得ることなわけだが――その点お前はうってつけだ」  屋上のフェンスにもたれかかってアリスは僕を指差す。  彼女が自分を「化け物」と称したことも、僕を「うってつけ」と称した事も意外だ。 「なんでだ。僕はオカルトマニアでもなんでもないぞ」 「死にたがってる奴を死ねなくしたら……はたしてどうするのだろうな? なあ零一お前が一番良く知ってるだろう?」  正直言って、してやられたと思った。屋上が僕の頭をほどよく冷やして、浅い思慮がフル活動して答えを導き出した。  言ってしまえば、僕はアリスの事を忘れないだろう。「不死」なんてはた迷惑な体質にした奴の事は忘れないはずだ。  はっきり言って憎たらしい。僕の理性は「戻れる」という点が留めてるにすぎないのだ。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加