不死者は学び舎の戸を叩く―開

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 アリスが途中で言葉を飲む。言葉の続きはこうだ。「そう先のことばかり考えてもしかたないだろう。」おおよそ、そんなような言葉だろう。  解る。解っている。これがどうしようもなく杞憂ぐらい馬鹿げた話だ。  将来は僕にとって、やってくるものじゃない。今も現に、そう切実に、僕の後ろからじわじわと追いかけてくる。  回避不可なモンスターだ。  そんな化け物に追われる恐怖を前にして僕は、臆病な僕は逃げ出したくて仕方ない。  でも化け物は僕と一心同体で切っても切れない。恐怖の中で生きるくらいならいっそ死んでしまいたい。  これはそういう救えない程に「死ぬほど臆病」な馬鹿の話だということだった。  こんな僕を、多分息吹ならば「玉なし」とでも称すかもしれない。あきれて愛想を尽かすのかもしれない。
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