不死者は学び舎の戸を叩く―開

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 自分の駄目さを誰よりわかっていて甘んじているのが僕だろう。  だからこそ伊吹とまともに接せないのかもしれない。  僕の卑屈さは今を見れる人間への諦めに似た憧れからくるものだろう。 「ひがんでもしかたないだろうになあ」  誰にでもなく自分に向かって呟く。戒め的な意味で。 「強欲はいつでも人間の専売特許だろう?」  アリスは僕が呟くのを待っていたように答えた。 「自分は自分。他人は他人だ」 「割り切ってるようで、割り切れてないな」 「悪いかよ」 「悪くはない。が、良くない」  大通りの交差点、夕方人通りも車通りも増える、その交差点を歩きながら僕らはお互い作るべき距離感を探した。  どこまで踏み込んでよくて、どこからが地雷原なのかということだ。
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