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「おい。」
タレ目に声をかけられる。
「なんだよ。」
拉致した相手にこの言葉使いはまずいか、と思ったがとりあえず返すことにした。
「今日からお前には、この国の女王になってもらう。お前は自分の名を捨て、『麗女王』と名乗れ。」
さっきの奴等と同じこと言ってやがる。
しかも名前まで指定してきやがった。
「さっきの奴等もそうだが…、この国は『女王になれ』っていうのが挨拶なのか?」
少しバカにしてみたら、タレ目は嫌な顔をしながら
「…急ぎすぎたか。この国の名は遼(リョウ)国という。それくらいは知ってるか?」と聞いてきた。
それが分かってたら苦労しねぇんだが。
「知らないな。残念ながら俺のいた国は多分、この国には限りなく遠い地にあるはずだ。そこに飾ってある植物や、庭にいる動物。全く見たことがない。アンタが今着ている服だって見たことない。何故こんなところに拉致されてるかも知りたい位だ。」俺の服は多少ボロボロだが気にするほどではない。
「だろうな。」
タレ目が少し笑った。
「俺もお前の着てるダサい服は見たことがない。」
だったら聞くな、あとダサいは余計だと言おうとしたが、タレ目が続ける。
「この国はある一族が治めており、金にも資源にも困ることはなかったのだが、数十年前に国王が暗殺された。毒殺だ。そしてそのご子息である王子が王位についたのだが、その数年後王子とその母君である、お妃がベッドの上で亡くなられていた。これも暗殺と考えられるが、酷い殺し方だ。お二人共、首がなくなっていた。斬首だ。」
斬首…。随分気持ち悪い殺し方だな…。
「そうして、残されたただ一人の王族。その方が麗女王なのだ。」
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