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俺は鬘をいじりながら言われた通り話を続ける。
「俺の居た国、エルベ王国は世界的貿易国だ。俺が拉致された場所である港は貿易船が星の数ほど停まってる。質素で小さい船もあれば、黄金に輝くでかい船もある。お前の国の船が一隻停まってるところで誰も気には留めない。そしてエルベの地を踏み込めば、船が多い分、異文化を持つ異人や商人で混みあっている。その中で俺一人拉致してもバレることはまず無い。全部計算内でエルベ王国を選んだんだろう?ちなみに多分お前の国はエルベ王国とは貿易を交わしていない。だから万が一拉致がバレても、あんたらは疑われることもない。ただ急いでた事は事実だろうがな。」
俺はため息をつきながら、いじっていた鬘を落とす。
どうだ、
「あってるか?」
じっとタレ目を見つめる。
タレ目野郎は目を見開いている。
そしてクスッと笑い一言。
「あぁ、九割五分はな。」
…九割五分……?
「後の五分はなんだよ。」
結構自信があったのに。
「残りの五分は『失敗』もしたって事。確かにお前のいう通りそこまでは計算内だった。ただたった1つだけ計算外だった物がある。お前のその頭だ。お前は意外と賢いようだ。随分面倒臭い奴を連れてきてしまったな。」
タレ目は口に手を当て、クスクス笑っている。
「残りの五分は惜しかったが、お褒めの言葉は有り難くいただく。『意外と』っていうのは余計だけどな。エルベで結構頭使っていた。」
タレ目は笑うのを止め、少し長めの前髪をかきあげる。
そして
「代用は頭を使う必要はない。ただ黙って、こちらの言う通りに大人しく座っていればいい。」
冷たく言い放った。
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