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「ところで」と、いきなり雪野が切り出す。
何事だろうと一樹がキョトンとした表情で見ていると、雪野が背後から何かを取り出す。
「これ、君の忘れ物だよ」
そう言って雪野が差し出したのは、一樹が脱ぎ捨てたコートと、シロをくるんでいたマフラーだった。
「あ、ありがとうございます!!」
一樹は礼を言い、コートとマフラーを受け取る。
コートのポケットには毛糸の手袋もきちんと入っていた。
雪野は嬉しそうに微笑みながら一樹を見ている。
「ど、どうかしましたか?」
一樹は不思議に思い、雪野に尋ねる。
すると雪野は、さらにニコリと微笑んで口を開く。
「ねえ、何か忘れていないかい?」
「えっ、何ですか?」
「これだよ」
そう言うと雪野はさらに背後から何かを取り出す。
そして、雪野が取り出したそれは、「にゃー」と鳴いた。
「ああっ!! シロ!!」
シロを受け取った一樹は、シロを抱きしめて頬ずりする。
もう二度と会うことができないと思っていたシロが戻ってきたことに、一樹は興奮していた。
そんな一樹とシロを、雪野は優しげな瞳で見守っていた。
「ねえ、シロ。これからはずっと一緒だよ」
「にゃー」
一樹の言葉に、シロは嬉しそうに応えた。
(完)
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