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その日は朝から雲一つ無く快晴で、澄んだ青がどこまでも広がっていたのだが、それに反して気温は低く、しっかりと服を着込んでいなければ、凍えて身動き一つできないと思えるほどだった。
いつも通り授業を終えた一樹は、買ったばかりの真新しいグレーのダッフルコートを制服の上に纏い、首にはバーバリーチェックのマフラーをしっかりと巻き、可愛らしい毛糸の手袋をはめて、自宅へと向かって学校を出た。
少し長めのに伸ばした髪に、まるで女の子のような整った可愛らしい顔立ちの一樹は、身長が一五〇センチメートル、体重四〇キログラムという小柄で細身な体型をしているため、ダッフルコートに毛糸の手袋などしていると、よく女の子と間違われる。
学校から自宅までは歩いて十分程度の距離しかないのだが、その短い道のりの中で、この冬に入ってすでに三度もナンパされている。
そんなとき、一樹も素直に男であると申し出ればよいのであろうが、ビビりな性格の一樹にはそうすることもできず、ただいつも一目散に逃げ出すのだ。
だが、一樹にしてみれば、そんなことはすでに慣れっこになっているので、怖くも何ともない。
大抵の男は、一樹が逃げ出せば諦めて、それ以上追いかけてくることもない。
それが、ある意味において、一樹の処世術でもあった。
一樹は学校を出ると、いつもと同じ道のりを通って自宅に向かった。
いつもであれば、誰かしら友達と一緒に帰るのであるが、その日はどの友達も都合が悪く、仕方なく一樹は一人で自宅に向かった。
男にナンパされるのは、大抵が一人で帰宅しているときだ。
だから、できることならば一樹は一人で帰宅したくはなかった。
しかし、だからといって、用事のある友人を無理矢理引っ張って連れて帰るわけにもいかない。
一樹はできるだけ人目を避けるように、足早に自宅に向かった。
そして、公園の角を曲がろうとしたその時、どこかから、「にゃー」という、か細い猫の声が聞こえてきた。
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